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KOTOKOさん「ひとりごと」

投稿者:斎藤滋
投稿日時:2020年9月5日

KOTOKOさん「ひとりごと」

僕の人生を変えてくれた曲がいくつかあります。

 

その1つがKOTOKOさんの「ひとりごと」です。

KOTOKOさんの1stアルバム「羽-hane-」に収録されている1曲です。

 

このアルバムの発売日は2004年4月21日です。

 

でも、「ひとりごと」は、「hitorigoto」という商品として2001年12月29日にコミケ61の会場と通販で発売された商品に収録されたのが初だと思います。

 

僕が「ひとりごと」を初めて耳にしたのは、「hitorigoto」リリースのタイミングではなくて「羽-hane-」のリリースの時です。

 
 

今でもずっとこの「ひとりごと」を目指して音楽制作業務をしているように思います。

まだ全然たどり着けてないと思ってます。

 
 

楽曲の善し悪しというのは、完全に個人個人によりけりだと思います。

絶対的な指標というのは無いと感じています。

 

ですので「ひとりごと」に対する僕個人の感情というのは、完全に個人的な感情です。
 
 

なぜ「ひとりごと」にこんなに今でも想いを馳せるのかというのを考えてみました。

2004年4月にこの曲の存在を知ってからもう16年以上が経ちます。今でもこの「ひとりごと」という曲には惹かれ続けています。

 

それはおそらく当時の僕が置かれていた状況と密接にリンクしているのだと思います。

音楽が人に与える影響ってその時のその人の置かれている状況とリンクします。

 
 

2004年4月。

このとき僕はサイトロン(正確には「サイトロン・デジタルコンテンツ株式会社」)に所属していました。

 

サイトロンでは主にMemories offというゲームの音楽や音響制作に携わっていました。今の自分の礎の1つです。

アニメーションの世界ではなくて、ゲームサウンドの世界での仕事でした。僕らはゲームサウンドで勝負するのだという気概で日々やってました。それでもやはりゲームとアニメは近いところにあるもので、アニメ業界の音楽情報も日々入ってきます。でも当時はアニメの世界はとても遠いところにあるような気持ちでした。

 

ゲームサウンドの世界では、コンシューマーとPCと、ざっくり2つのジャンルがあったように思います。サイトロンは多くの作品において基本はコンシューマーのゲームに関わることが多かったのです。ただ、徐々にPCゲームの音楽制作にも着手する流れが生まれました。

「羽-hane-」がリリースされた2004年は、当時KOTOKOさんが所属されていたI’veさんが非常に強いとされていました。

 

僕らが色々な営業活動をしてる時も、ゲームメーカーの担当者からは「I’veサウンドが欲しい」「I’veさんだったらいいんだけども」というようなお話をたくさん聞きました。

 

「I’ve sound」というステッカーが貼られているだけで、そのゲームの売上が相当に増加するという現象が起こっていました。

 

I’veさんの音は聞くことが出来るのだけど、作っている方々との接点は皆無。

どうやら札幌のクリエイター集団らしい。くらいの情報で止まってしまう。謎のクリエイター集団でした。

 

ある意味ライバル集団でもあり、同業者でもあり。

創作される音楽はどれも確かに素晴らしくて、憧れの存在でした。

 
 

そうこうしているうちに、アニメについにI’veが進出したというニュースが入ってきます。

「おねがい☆ティーチャー」というアニメのOP、ED、劇伴をI’veがやると。

そしてそれはランティスというレコード会社が手がけるのだと。

 

衝撃的でした。

ランティスは当時は新興勢力で、サイトロンからしたら対峙すべきライバル会社でした。ランティスの勢いはすさまじく、破竹の勢いという印象だったのです。

サイトロンは老舗として負けてられないと、ライバル感むき出しで努力していました。

 

そのランティスがI’veと組んでアニメの音楽を手がける。

ファンや世間にとっては、何もかもが最高のタイミングでした。

ファンは大騒ぎです。

僕もサイトロンの社員でしたが、心の中で大騒ぎでした。

突き放されてしまう・・・!という焦り。一方で、どんな音楽なんだろう?というワクワク。

 

「おねがい☆ティーチャー」、そして続編の「おねがい☆ツインズ」でI’veサウンドはこれ以上無いと言って良いほどの輝きを放ちました。

メロディもアレンジも。歌も。

圧倒的で。どうしたらそこに近づけるのか、全く分からなかったです。

 

「おねがい☆ティーチャー」は2002年のアニメ。「〜ツインズ」は2003年。

ツインズのOP「Second Flight」は、KOTOKOさんと佐藤裕美(今は佐藤ひろ美)さんのデュエットでした。その佐藤ひろ美さんとはその後色々な縁が深まるのですが、それはまた別の話で。

 
 

「Second Flight」がまた、僕としては衝撃でした。

完全に個人的な感想ですが、完璧でした。イントロ、ABCメロ、歌唱、アレンジ。

こういう曲を制作するにはどうしたら良いのか、皆目見当もつかなかった。

どう発注したらこうなるのか。そもそもアニメのOPにこういう凄いクリエイターを招聘するにはどうしたら良いのか。こういう凄い歌い手に歌ってもらうには。さらに凄い歌い手が2名でデュエット。どうしたらこういう流れを生み出せるのか。

何もかもが謎だらけでした。

 

ある意味、絶望に近い尊敬の念を持って聞いていました。

どうやっても自分にはこの制作は出来ない。そういう絶望感。

でも音楽ファンとしては、これ以上無い興奮と高揚感。

複雑な気持ちでした。

 

そういう流れと感情があり、ついにKOTOKOさんがメジャー1stアルバム「羽-hane-」をリリースします。個人名義としての、そしてメジャーレコード会社からの1stアルバム。宣伝も力が入ってました。少し想い出が盛られているかもですが、どこに行っても、どこにアクセスしてもこのアルバムの宣伝が目に飛び込んで来ました。KOTOKOさんが横向きで、長い黒髪が左側にたなびいているビジュアル。

そしてアルバムリード曲のPVはアメリカで撮影。

PC音楽業界の歌姫としては当時の最高ステータスだったと思います。

 

発売日を心待ちにして手にした「羽-hane-」。

どれもこれも凄い。完全にI’veサウンドの信奉者となっていた僕にとって、それは宝箱のようなアルバムでした。

その中でもひときわ心に刺さったのが「ひとりごと」でした。

 

イントロの美しさ。

気持ち良く聞こえてくるリズムトラック。

そして切ないメロディ。

イントロが52秒もあるのです。アニメタイアップの方程式にはありえない長さです。でもそれがこの曲的には最高な枕でした。

 

メロもアレンジも何もかもが素晴らしいのですが、特に心惹かれたのはハモの重ね具合です。

サビのハモです。凄い深みで耳に入ってくるハモり具合。

どうやったらこうなるのか、凄く研究しました。当時僕もサイトロンで音楽制作をしていましたが、普通にやるとこう聞こえてこないのです。MIXの具合とか、色々な工夫があってあの聞こえ方なんだろうなと。そしてKOTOKOさんというオンリーワンの歌声があってこそのあの聴感になるんだろうなと結論したのでした。

 

アレンジも凄いです。

この曲は短くないです。「羽-hane-」に収録されているのは6分46秒もあります。長いです。

でも、長く感じない。色々な工夫があってそうなってます。

アレンジの展開とか、メロディの構成とか。

そもそもメロと歌詞が素晴らしいので飽きないというのもあると思います。

 
 

いつかI’veさんと会う日が来たら、「ひとりごと」について思っていること、感じたこと、知りたいことを聞くのだ。

と強く願い続けていました。

 

そして、原盤制作者としては、「ひとりごと」に少しでも近づけるように頑張ろうと決意したのでした。

その後、I’veさんやKOTOKOさんとお仕事が出来るようになり、気軽な会話も出来るようになり、「ひとりごと」についての僕の非常に個人的でそして暑苦しい吐露もさせていただき、目標の1つは達したと思います。

 

でも、当時の自分が「ひとりごと」という曲からいただいた衝撃と感動を、今の僕が生み出せているかは、自分でもまだ分かりません。たぶん、まだ出来ていません。

 

それくらい「ひとりごと」という曲は衝撃的な感動がありました。

 

音楽はその時のその人の置かれている状況や感情によって、受け取る気持ちが様々だと思います。そういう曲に1曲でも多く出会えるような人生でありたいと思っています。

 
 

色々な曲をシャッフル再生していたら「ひとりごと」にたどり着いて、色々なことを思い出したので書いてみました。

 

斎藤

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