きっかけは斎藤滋さんからのメールでした。
この夏、斎藤さんが長年音楽プロデュースに携わっている茅原実里さんの河口湖ライブがありました。一人のファンとして描いた応援イラストに興味を持っていただき、後日事務所へ訪問する運びとなります。そこで紹介された企画が「UTA-KATA~夜明けの吟遊詩人」でした。初めて聞いたときは、
えっあの!? 全世界待望の! 劇場版のヒロイン役の石川由依さん!?
恐らく、私は前世で世界を救ったのかもしれません。そうした経緯でイラストレポートという大役を担い、現場にお邪魔しました。
会場はちょうど音楽リハの終盤。ガルバホールからピアノの音色と歌声が聞こえてきます。石川さんの歌声は澄み切っていて、柔らかく口元を微笑ませて歌っている姿が目に浮かぶくらいに表現力豊か。しかも、しっかり遠くまで届けるほどの声量も兼ね揃えています。
斎藤さんに紹介されて、会場の皆さんにご挨拶する瞬間が最も緊張感がありましたが、第一線で活躍する方々は、人柄も気さくで人当たり素晴らしく、ほっと一息。
ゲネプロを通してみて、会場内のスペースの使い方や、照明、カメラ、音の返しなど、より完成度を高めるべく調整を加えます。実績を積んできたスタッフの方々であっても、実際にやってみて気が付く改善点を一つずつ消化していくのです。
なるほど、これがいい現場というものか。すべての段取りに目途がついて、ようやくお弁当を手にして談笑するプロの姿は、かっこいいの一言に尽きます。
石川さんと伊藤さんは、周囲を明るくするオーラをずっと出しており、思い返すと呼吸はすべてマイナスイオンだったのかもしれません。そんなお二人なのに、なぜあれほどの体力と集中力が続くのか。音楽リハやゲネプロで力をセーブする様子はなく、ずっと本気で取り組み、本番に向けて研ぎ澄ましていく様子で、さながら職人かアスリート。本編の終わりやアフタートークの直後に、ふっとこぼれる柔らかい笑顔がとても印象的でした。
撤収作業は、慌ただしくテキパキと進みながらも、スタッフ同士は賑やかで楽しそう。
やり切った達成感と心地よい疲労感に溢れていて、まるで文化祭の後のような不思議な感覚なのかもしれません。
特別な時間はあっという間で、それぞれが翌日からいつもの日常へと戻っていきます。
ですが、多くの人達の情熱を込めて作られている「UTA-KATA」は、いつもの日常に新しい輝きをくれることでしょう。
だからこそ、もっとたくさんの人に観てもらいたい。聴いてもらいたい。人に薦めたい。そんな時に物語の最後のセリフはピッタリです。
夜明けの吟遊詩人を、知っていませんか、と。
歌と楽曲自体が本当に素晴らしい。ですが、この作品においては、物語と共に聴いたときこそが完全な姿。物語を知りたい時も心配無用。CDには初演を完全収録したDVDもついて至れり尽くせり。
いざや、いざや、ご覧あれ!
イラスト・文/けすのいえ https://twitter.com/kesunoie