5分ブログです。
ミュージックビデオを撮影する時。クレーンを使うことが良くあります。ダイナミックな高低の表現をする時に欠かせません。先日、とあるミュージックビデオの映像が完成しました。チームのスタッフさんから完パケ(完パケってのは完成した成果物のこと)映像が届いたのです。
そこには凄いダイナミックに上空から撮影された映像がありました。そして上行ったり、下行ったり、近づいたり、離れたりしています。その映像を観ながら時代の進化変化を感じるのです。
そう、それはドローンが撮影したものでした。クレーンはどうしても動きに限界があります。軸の長さが可動範囲の長さとなります。それ以上の挙動は出来ない。しかしドローンは飛びます。自由に飛び回るので電波が届く範囲であれば(&操縦者が管理出来る範囲であれば)無限に動けます。
クレーンが好きだと言い続けてはや20年くらいになるでしょうか。そろそろ「ドローンが好き」と言うべきか。いや、「ドローン“も”好き」と言うべきか。
クレーンがなぜそんなに好きなのか。まだミュージックビデオ(MV)と言わずプロモーションビデオ(PV)と称していた時代、当時の僕はまだまだ映像制作の経験が少なかったのです。PVというのは夢の領域でした。お金が必要です。始めて制作プロデュースとしてPVを作ったのはtiarawayというアーティストの「From silent sky」という作品です。動画サイトで検索すると出てくるかもしれません。ちなみにこのFrom silent skyの監督は、茅原実里さんの「君がくれたあの日」の監督さんと同じ方です。見比べると、確かに、、と分かると思います。テイストに共通点がありますね。
話は戻って「From silent sky」なんですが、クレーンを使っていません。クレーンを使うと当然ながらクレーンチーム用の費用がかかります。そこまで予算的な余裕は無かった案件だったのです。
そしてその後、いくつかのPV制作のプロデュースに携わるも、クレーンを使った撮影というのはありませんでした。基本的にはどれも予算の問題からです。しかし、ついにその時はやってきました。茅原実里さん「詩人の旅」です。ここでクレーンを使う状況を作ることが出来ました。ついに高低差のある映像が・・・!やってくる・・・!
詩人の旅の1番のサビ。そこの映像が僕のクレーン人生(そんな人生あるのか)で白眉の時間です。(白眉=はくび=優れたものという意味です)
レーベルの公式としてYouTubeにアップされていますので、ぜひ観てみてください。
現場でクレーン技師さんと監督(ポポロこと藤田宏治さん)に、可能な限り最速で最大の動きをお願いしますと頼みました。クレーン技師さんは「任せとけ」という反応を見せてくださり、全身汗だくになりながら巨大なクレーンをぶん回してくれました。大きなクレーンを凄いスピードで動かすってのはもの凄く体力が必要なのです。激しい運動です。(添付の画像はその瞬間を切り取ったもの。スピード感が伝わるかと思います。クレーン技師さん、目一杯のスピードをありがとうございました。)
そして出来上がったのが白眉の1サビだったわけです。
その想い出がずっと美しいまま脳に刻まれ、クレーンが好きという自分になっていきました。「詩人の旅」以前に、自費でミニクレーンを買うという奇行もしていました。映像制作会社でも無い一個人がクレーンを、ミニサイズとはいえ、買うというのは奇行です。奇行of奇行。でも必要な行為でした。
そんな僕がドローン時代の到来を体感し、ドローンの凄さに舌を巻き、もうクレーンの出番は減っていくのかもしれないと切なくなるのでした。キングダムで例えると王騎将軍の時代から次の時代に移っていく気持ちと似ています。
しかし。
MV制作現場では減るかもしれないですが、ライブ撮影ではクレーンの時代は続きます。ドローンは羽音が凄いからライブ現場では使いどころが難しい。そして観客の頭上を飛ばすことは出来ない。などなど制約がまだまだありまして、ライブ現場ではクレーンの独壇場です。
クレーンとドローン。響きも文字数も似ているので仲良くやって欲しいと思います。だれも争ってないと思うけども。
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